青森県弘前市、中国での「弘前」商標申請を懸念
2016年6月15日、青森県弘前市は「弘前」の文字が中国で商標申請されたこと、異議申し立ての意思があることを明らかにした。弘前市では、弘前産品の中国輸出への影響を懸念している。
(参照:「千葉」の中国商標登録、千葉県が異議申し立て)
弘前市によると、この商標申請をしたのは中国江蘇省の住民であり、2015年6月に中国商標局に対して申請をしている。商標区分は「コーヒー、茶、菓子、米粉など」の食品が対象となっており、明朝体表記の「弘前」が申請された。2016年5月20日付の官報へ公告記載されたことで弘前市側としても認識し、公告3か月以内に異議申し立てをすると表明している。
弘前市としては、地元産品のリンゴ加工品や米粉せんべいなどの中国向け輸出に影響がでることを懸念している。過去には、中国・広州市の企業によって農産物などの区分において「青森」の文字の商標登録が2002年にされている。その際は2003年に青森県が異議申し立てをし、2007年に県の主張が認められて中国商標法に抵触するとの判断がなされている。
今回、中国人が申請した「弘前」の商標登録が承認されると、今後、日本の弘前市の生産者は、中国で、「弘前」のブランドを使用して、「コーヒー、茶、菓子、米粉など」の食品を中国で販売できなくなります。
弘前といえば、煎餅の生産が盛んですが、そういった煎餅を中国で「弘前」の名称を利用して販売することはできず、中国での販売のために別の名称を考案しなくてはなりません。
日本では、原則として、地名は商標登録はできません。地名は、誰もが自由に利用できる性質のものであり、商標登録を行って、特定の者が独占的に使用する権利を与えられることにはなじまないからです。
なお、団体の組合員であれば誰でも使用できるという条件の下、団体によってのみ出願が可能な、地域団体商標登録という制度がありますが、この制度を利用した場合には、例外的に、地名をブランドに使用することができます。
この観点からすると、中国においては「弘前」は地名として扱われませんから、商標登録が可能であるとの解釈が成り立ちます。しかし、中国においては、公衆に広く知られた外国の地理的名称は商標登録できないと法律で定められています。
したがって、日本の弘前市が行った今回の異議申し立てが中国商標当局に認められるかどうかは、「弘前」が公衆に広く知られた外国の地理的名称に該当するかどうかという点にかかっています。
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